【読書】関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション

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関係人口とは

全国の約半数の自治体が消滅する恐れがあるとされた増田レポートによれば、島根県内の8割以上の自治体が消滅の恐れがあると名指しされた。その解決策の1つである「関係人口」とは何かを本書から引用したい。

関係人口とは、住んでいなくても、地域に多様に関わる人々=仲間のことです。例えば、定期的に足を運び、特産品を買ってくれる。離れていても、地域のファンであり、ともに盛り上げてくれる。その地域に住む「定住人口」でもなく、短期的に訪れる「交流人口」でもない、新しい人口の考え方です。

P26

空き家の斡旋、子供の医療費の無料、引っ越したら〇〇万円等の自治体間人口獲得ゲームが繰り広げられている。しかし、日本全体の人口は減り続けている。2030年までに1億1662万人に減り、2053年には1億人を割り込んで9962万人になると予想されている。減少を前提に、新しい戦略を描く必要がある。日本人自体がどんどん減っているのだから、地方自治体間で、定住人口という限られたパイの奪い合いを繰り広げるゼロサムゲームを国内で実施することは不毛でしかない。

島根県は都道府県で唯一、国勢調査開始時となる大正時代の1920年時点の人口を下回っている。つまり、全都道府県でトップの減少率となっている

P203

関わり方の階段

本書では移住したい若者が増えているにも関わらず「実際に定住しなければ、地方のことは分からない」という強迫観念によって、関係性のハードルが上がっていると指摘している。

「住む」=滞在時間ではない評価の基準こそが、関係人口には必要なのです。

P64

関係人口は、地域外からの旅行や短期滞在で訪れる人を増やす「交流人口」と住んでいる人を増やす「定住人口」の間であり、それを狙えと。あ!っこれも、ランチェスター戦略ですわ。

関係人口の中にも、「関わり方の階段」という名のグラデーションが存在する。①特産品を購入、②寄付(ふるさと納税)、③頻繁な訪問、④現地ボランティア活動、⑤二地域居住、といった階段があり、移住・定住に拘らない考え方を重要視しており、定住のハードルを下げることで人との関わり方の裾野を広げている。

また、継続的な関係性を生み出すために「戦略的ゆるさ」が必要だととく。StudioLの山崎亮さんがコーディネーターを勤めればクールでカッコ良い地域再生プロジェクトを推進できる可能性もあるが、みんなが気楽に参加できる環境づくりを作る組織の在り方も、戦略としては有。

関係性の再構築

これは個人と地方の関係性だけに留まる話ではない。個人と社会、個人と他者による関係性の全般に当てはめて考える必要がある。

コロナで生まれた物理的な分断により、(統計データを得ているものではないけれど)無縁や孤独に苛まれている人々が増えているのは肌感覚として間違いない。物理的な分断によって、関係性が縮小され、個人と社会の構図が更にナショナリズム的にミニマルな関係性に収束されている。資本主義社会の醸造により合理主義は推奨され、コロナによって分断は加速し、「無駄な関係性」は排除され始めた。

だけど、無意味な対話を不要とする合理的な対話を追い求めてしまっては、偶発的な関係性は生まれない。我々の社会は数字だけで示されるほど簡単ではなく、人間の心を反映した社会は複雑に出来上がっている。

モノが溢れている現代、ポストコロナ社会で最も必要なテーマは「関係性」にある。それは本書で語られる直接的なコミュニケーションである必要はない。ゼロイチで考えない「関わり方の階段」によって、段階的且つ最適な関係性の在り方を、関係性を慮る必要な事象に対して、それぞれ模索する必要があると思った。