「好きなこと」だけで生きぬく力
内容
村上隆の著書では等身大フィギュアの作成に関与し、みうらじゅんの著書では精巧な仏像フィギュア作った会社として、「海洋堂」の名前が浮かび上がってきたので、必然的に社長である宮脇修一氏の本書を読んだ。
これまた表紙に本人の顔写真が大きく掲載されていて、自己肯定感強めの印象を受ける。宮脇修一氏は生粋の関西人で、本書は「オタクの、オタクによる、オタクのための思想書」だった。
人生なんて、好きなものと出会えただけで、かなりのアドバンテージになります。「好き」と言う気持ちが、勝利への第一歩なのです。
P5
(オタクは)好きなもの、興味があるものに対しては、とことんのめり込みます。その対象が、普通の人からみればアホみたいなものでも、かっこ悪いものでも関係ありません。
自分が好きなもののためなら、周りの目など気にせず、一心不乱にのめり込んでしまう資質を持つ者。それがオタクなんです。
P75
オタクって、実はPunkをやっている。社会へのアンチテーゼや思想を持つ人間は、必然的にオタクになり、仮面を被りながら一生パンクロックやっているのだと思う。「陽の当たらない場所でしか生まれない」光あれば影がある場所を大事にすべき。日陰者の反骨精神こそが、オタクカルチャーを作っている。
僕らのようなオタク的思考の人間からすれば、キラキラしたキャンパスで楽しく明るい学生生活を送る学生たちだとか、おしゃれなオフィスできびきび働くさわやかな社員たちだとか、そんな世界はクソくらえなわけです。
僕にいわせれば、幸せそうな、楽しそうな、ただ居心地がいいだけの場所では、なかなか才能は育ちにくい。
P77
マイノリティ精神を重要視するオタク文化を、当初、村上隆が商用価値として使用するような感覚で乗り込んできたのは大きな反感を買ったに違いない。結果として、村上隆の信じられない芸術への情熱と西洋芸術の文脈への理解と挑戦が、海洋堂の職人たちを突き動かしたのだと思うが、一歩間違えばオタクを馬鹿にしたような作品と捉えられるのは仕方ないような気もする。
フィギュアや漫画の日本人のオタク気質は、海外から見れば「異質な感覚」であり、コンセプトを海外にぶつけただけでは理解されない。だからこそ、村上隆は文脈を理解しろ!と叫んでいるのだろう…と思った。
海洋堂はコンセプトを重視していて、営業やマーケティングは無視していると書いてあったけど、結局のところはランチェスターの法則に基づいている。みうらじゅんと比較すると法人としてストイックな要素もあるけど、結局は「ない仕事を作る」ことと同義の考え方だと思った。誰もやっていないことを精巧な技術として創り上げ、ニーズを生み出したからこそ事業として成功した。
つまり、お客さんの好きなものをつくるのではなく、お客さんが見たこともないもの、好きになるもの、楽しいもの、欲しくなるものを僕らが生み出し、発信していきたいんです。
いうなれば、お客さんに聞くのではなく、「お客さんに教えてあげよう」と言う”超上から目線”です。
P33
僕らオタクの価値観は、相対的ではなく絶対的です。
好きなことや興味のあることを、狭く深くやっていけば、道は勝手にできていくものです。そしてその道を一歩ずつ進んでいけば、いつのまにか、踏みしめた実績みたいなものもできてくる。
P194,195
経営指南やテクニック論は全く書いてなくて、「とにかく好きなことをやり続けろ!」、「好きを人生の礎にしろ!」という思想書だった。手法を学びたい人にとっては物足りない気がするが、著者が最も重要視することはテクニックではなく理念であった。
自分の場合は、何を燃料に暮らしたいのかと言えば「学ぶことが楽しい」「無意識の中にあるフロー体験」にある。たくさん学習して、技術を自動的にアウトプットできるまで反復すること。論理を構築出来たら、意識を作業に向けて実行するのみ。それを社会的ニーズとマッチングし、「蟹穴主義」で生活したい。
自分の得意なこと(=低労力で高品質)をすれば、資本を増やせる仕組みを作る。「教養、金融リテラシー、歴史と未来予測」を中心にインプット、そして無心に作業と行動。煩悩を減らして無意識に動くことが成功の元。煩悩を削ぎ落として、物事に集中する時間を増やし、最適化を目指すことがマインド的には目標。