イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
2010年に公開された映画。「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(お土産を売るためのアート=クソみたいな作品をバカに売りつける方法)がタイトルになっている。
2006年からバンクシーのマネージャーを務めたホリーカッシングが制作しているのが味噌。ホリーカッシングはハリウッドスターの元マネージャーをしていた。
カメラ無しでは生きていけないカメラ中毒のティエリーが、スペースインベーダーのモザイク画を描いていた従兄弟の撮影後にバンクシーと出会い、最後には自身がMBWというアートブランドを立ち上げるまでのドキュメンタリータッチの映画。監督はバンクシー。
そもそもストリートアートは、1970年代に生じたパンクムーヴメントがネット文化と共にストリートアートに点火(転化)したもので、反社会体制に対する自己表現やプロパガンダであると。逮捕されるかもしれないという危険性を孕んでいるのも、若者にとってはスリリングで好奇心をくすぐられた。
シェパード・フェアリーのOBEYステッカーを真似て、自分自身のステッカーを使ったティエリーは、アートの深みにハマって自分のステッカーを街中に貼りまくる。バンクシーがティエリが作った映画を観て思った感想が「彼は映画監督じゃない、精神に異常があるカメラオタクだ」といったのが率直な意見で笑えた。
2006年LAで開催された「BarelyLeagal」の映像が含まれている。老象にペイティングをした作品は、やはり印象的。
ティエリーは次第にアートを商業化し始める。ビビットで、過激で、無意味で、シンプルな作品が人には受ける。有名人と危険物を組み合わせるだけ、独裁者のように自分は指示をするだけ。次第にアートではなく、プロパガンダへと移行する。
この模倣品を量産するアートの形は、現在の商業価値の本質の1つと思う。ウォーホルとは全く違う。商業価値とプロパガンダが先走って、アートの本質は後回しになった。
世界で最初の映画もモキュメンタリーであったらしく、当初はプロパガンダ映画がほとんどだった。戦争で利用されたのは言うまでもない。もしかしたら、この映画自体もモキュメンタリーなのかもしれない。
バスキア、キース・ヘリング、バンクシー、村上隆にも共通するのは、ポップで平易で、シニカルで、反資本主義で、プロパガンダが上手いというのが、現代アートで成功する為には必要らしい。