1917 命をかけた伝令
サム・メンデス監督が祖父のWWⅠ戦争体験を基に作った、フィクション作品。
WWⅠのきっかけは、オーストリアの皇太子をセルビア人が銃殺した事件<サラエボ事件:1914年>を発端としているけど、1917年にはなぜ戦争しているか分からない状態。ちょっかいをかけたロシア帝国も意味不明だし、英も独も本来は無関係。WWⅠは初めて毒ガスや戦車などが使用された戦争らしい。
ワンカット(に見える)映像技法で、戦争体験の臨場感を強く描いている。戦争時の不条理を映画によって擬似体験させるのに、ここまで効果的な技法はないかもしれない。ハイデッガーの思想によれば、死を強烈に意識することで、人間は実存を理解できるらしいよ。
想像するだけでも、気の遠くなるような撮影準備がなされている。ぬかるんだ道でのカメラワーク、暗室と外の露光の使い分け、フォーカスをやり直しで瞬時に合致させる。落橋した鋼橋を歩く描写なんて、ただ脱帽。
技術が向上し、擬似体験がリアルに感じられ、戦争映画は生ぬるい現代社会への『実存特効薬』になっている気がする。