【映画】東京物語

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東京物語

ホワイトノイズがバックに流れている旧い映画を初めてみたかもしれない。小津映画はずっと観ないといけないと思っていた。

原節子という大女優に、全てを呑まれた。モノクロのフィルム映像なのに、くっきりと光り輝いて視える。撮影時はおそらく30歳くらいだと思うが、その妖艶さにどっぷりと溺れる。語彙力の無さから平易な言葉で書いてしまうと、オーラがある。この人が生涯独身を貫き、永遠の処女と呼ばれていたのは、全くもって理解し難い。

噂に聴いてはいたが、計算され尽くした緻密な構図に恐怖さえ覚える。理路整然と映し出されるカメラワークに、昭和の生活感を全くと言って良いほど感じ取れない。なんというか、AIが作っているのでは?と思うほど。人間味を感じないのが、自分の中で意外すぎて逆に面白い。

役者のセリフの度に正面(カメラ目線)からのカットが切られており、当然にズームやパンなどない、チルトの動きさえないから怖いと感じるのかも。こんなやり方今やったらホラーにしか見えない。完璧に計算された写真が動いている、不自然さ。棒読み感のある役者の演技も合間って、到底これが家族とは思えない。

おそらく、役者の演技で映画を見せようとしていないのだ。不自然にカッチリと揃えられた生活感のない家具に囲まれて、役者たちが決められた「セリフ」を言わされている。これは、、、、、映画じゃない。旅館の履物1つにしても、不自然に、1mmの誤差もなく、整然と座っているのが気味が悪い。

カメラワークが不気味に思えて仕方がないが、物語の中盤から少しずつこの奇妙な描写に慣れてきて、むしろ一切の無駄がない画角が心地よく、ストーリーに集中して見れるようになってきた。

70年前と比べて、テクノロジーの進化は人類史上最も加速したが、道徳は何も変わっていない。子供に世間評価の高い仕事に従事してほしいと願う姿は、親子の間で何も変わっていない。血縁関係よりも深い情愛。純朴な心こそが僕らの宝であり、精神性である。物理的に疎遠になる関係性だからこそ、情愛が最強になる時代が訪れるのは間違いない。