【映画】サイコ

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あらすじ

会社の金4万ドルを盗んで、逃げた女性マリオンがベイツ・モーテルで殺害されるサイコ・サスペンス。1960年製作、アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作。

内容

ヒッチコック初見。

モノクロームだと知らずに借りて少し萎えたが、序盤から面白い。
金持ちが預けた預金をネコババする序盤の設定ですぐに映画に飲み込まれる。

気狂いピエロもそうだったけど、車の運転シーンの合成した映像はやっぱ今見るとチープな感じするけど、それはそれで味がある。モノクロームは大人は分かってくれないから2作品目だけど、普通に映像が美しくて、カラーグレーディングされていないから逆に映像美とストーリーに集中できるのかも。

にしてもテーマソングが怖すぎ。このテーマ誰が考えたんや。ホラー映画は人間の表情と音響で作ると思っている派なんだけど、やっぱり間違ってない。ナンバープレートをチラ見せする演出とか、カメラワークもかなりこだわってんなぁ…。今見ても全然見れる。

鳥の剥製が不気味だ。ゴールデンカムイでは人間の剥製を作る変人がいたけど、剥製は不気味だ。青年が人生感について確信めいたことを言うけど、これはヒッチコックの言葉なのか…。不気味な剥製をバックで照らしながら、病気の母親の過去について話す青年。

ここまでで起承転結が心地よい、お金を盗む、モーテルで不気味な剥製づくりの青年と出会い、病気の母親について話を聞く。全く飽きさせない。

母親へ施設へ預けることを提案すると、優しかった青年の表情が一転する。不気味な描写の演出が、突然の場面転換での緊張感を煽る。

そういえば、新道が出来たことでモーテルには誰も泊まってないところから何か不吉な匂いがしていた。古い映画で舐めていたが、サスペンスとして非常に精度が高い。役者は若いけど映画の趣旨を理解していて、表情の細部から冷たくて後味の悪い狂気が漂ってくる。緻密に計算されている。

覗きのシーンがここでも。ワンスアポンタイムインアメリカは覗きが可愛かったけど、これは単純に気持ち悪い。

シャワーシーンも浴びてるだけで怖い。あー、襲われる時の有名なテーマソングってサイコが発祥なのか!!!きゅんきゅんきゅんドンドンドンってやつ。知らんかったー。ザコシショウがモノマネしてるアレです。

モーテルを経営している青年が犯人じゃないのも意外。こういう裏切りも観客を飽きさせない演出。狂気だけをまざまざと見せつけるんじゃなくて、あくまでもサスペンス。あぁなんと知的な映画なことよ。

青年が遺体をどうするのかめっちゃ気になる。剥製づくりが頭をよぎる。どう見ても主人公の女性に恋をしていたし、遺体をそのままにしておくなんて考えられない。遺体を袋に入れて、持ち上げるシーンが美しいなぁ…モノクロの美しさよなぁ…。

病気の母に会うまで、階段を上るシーンなんか怖い。ただ、やっぱり狂気が露出すると非常に滑稽に見える。これは悪魔のいけにえでも感じたこと。ホラーがホラーになってないのが、めっちゃ可愛い。

めちゃくちゃシンプルな設定なのに、いるはずの母親が本当は死んでいたという要素だけで飽きずに映画を観続けられる。シンプルであるがゆえに、物語の真相だけに集中しやすい。途中から母親が剥製だということに感づいてきたけど。

いやぁまさか自分が母親になりきっていたとは…。いやぁ…これは素晴らしい。間違いなく名作だ。

金を盗んだ主人公の女性が主人公かと思いきや、宿屋の青年がメインだった。主人公を殺したのが誰だったのか分からなかったけど、ノーマンが母親の姿をしていたのか。あぁ…これだよこれ…この狂気だよ…。そして、この映画を的確に表現できるキャスト。

ラストシーン、母親になってしまったノーマンの顔。今までのストーリーはこの表情を撮るためだったと言っても過言ではない。映画史に燦然と輝く、最高の表情。

星評価:★★★★★