あらすじ
5年の刑期を終え、刑務所から釈放されたビリー・ブラウンは、ニューヨーク州バッファローの実家に戻ろうとするが、長年の溝がある両親には電話で刑務所にいたことは話しておらず、電話で「政府の仕事で遠くまで行っていた」と偽る。さらに勢いで「フィアンセを連れて帰る」と嘘を並べてしまう…。
感想
1998年公開。
冒頭からモンタージュ技法で過去を映す世界観に、アートっぽさを感じる。
ビリーの赤い靴が映えるなぁ。8mmっぽい映像の写りで、わざとなのか??最初のベンチに横たわるビリーの絵で、孤独を写した作品であることは分かった。
マニュアル車が運転できない件は、面白かった。神経質で潔癖症なビリーの性質がここから既に見え隠れする。
実家に戻った後の、カメラを切り替える演出も面白い。うーん、少し演劇的な匂いもしてきたぞ。
毒親問題が入る。ビリーが何故犯罪を犯してしまうのかはここに原因がある。どうでもいいけど、ビリーの幼少期を演じている少年がめっちゃ可愛い。
にしても、クリスティーナ・リッチのおっぱいが綺麗で素晴らしい。これを見るだけでも価値がある。えーアダムスファミリーに出演してた人か〜、こんな感じになってたなんて!一気に親近感湧いた。そして、この女、どこかでビリーを裏切るんじゃないかとこの時点では思っていた。
親父が部屋で歌を唄うシーンで、確実にアート性を持った作品であることを理解した。
ボーリング場のスローになるシーンは最高に痺れる。これは物語性よりも描写方法に注目すべき映画。低予算映画っぽいけど、日常系で飛び込んでくる絵には凝ってる。2人の写真撮るシーンとかこんなに長くなくていいだろうと思うけど、これが撮りたかったんだろうなぁ。
生きられないと、トイレでビリーが孤独に泣くシーン。あんなに強気に振る舞うビリーが見せる弱さ。こういうのに自分は弱い。数秒のカットだが、涙を持っていかれそうになった。
全く性描写がない。ビリーはもしかして女に興味がない???なんか、童貞説もあるっぽい。ベットでは、さすがにセックスするだろうと思ったら、その描写もない。なんだ、この映画。ビリーが斜めに寝ている感じが、面白い、誰にも承認されなかったから、人に甘えられないということなのだろうか。
お風呂のシーンも絵が本当に素晴らしい。ビリーと女の配置、タイルの感じが完璧。
ビリー、あなたは世界で一番優しい人よ、ハンサムだわ、愛している。
あー女心分かんねー。これだから自分はクソ。ダメ男ってなんでモテるんだよ!!!女は何故ここまでビリーに肩入れするのだろうか。女に対してひどい態度しか取っていないし、どう考えても最低の男なのに…ビリーのことを肯定するのは何故なのか、と思ってしまう。そして、逃げないのは何故なのか。
それにセックスしたいって言ったのも、女の方からで結局はアバズレなんじゃねぇか!!とも思った。なんだよ低俗同士のチンケな恋愛見せられてるだけかよーって。ってな感じの世間的な考え方に縛られているけど、これが設定上必要だし、理解できないのは自分の実体験が少ないからかもしれない。あと、彼女と別れてから、トイレが故障するのは何かのサインか。彼女無しでは生きられない…。
ロッカーの中身はやらないって言って、逆転したのはやばい。美人で気立てのいい女を見つけた。こういうオチになるとは思ってなかった。なるほど、これは救済の物語だ。自分を全肯定してくれる最愛の人を見つけて、ようやく道を外れることができた。
「男の弱さ」を描いて、また同時に「男の願望」を描いている。なんて都合のいい話なんだろうと解釈する人もいるだろうが、自分には刺さった。男の弱さと願望は、どのクラスタであれ、男には共通する概念だと思う。白馬の王子さまを反転させて、低俗に寄せたのがこの映画。
彼女は裏切らなかったし、ずっと全肯定してくれた。ラストが思っているより、完璧だった。この映画を観たことが、何かの啓示であって欲しいと思う…。
ちなみに、監督で主演のヴィンセント・ギャロは小津安二郎の大ファンで、かなり影響を受けているらしいね…なるほど。
星評価:★★★★★