【読書】生涯投資家

  • ブックマーク
  • Feedly

生涯投資家

なんとなく軽い気持ちで読み始めたのですが、金融に関する用語のオンパレードで自分には特に最初の章あたりが理解不能でしたので、金融用語を勉強した記事になってしまいました。一応、著者も素人のために用語解説をしてくれてるけど…。

筆者は官僚時代に経営者と会食する機会が何度かあったが、自社の財務諸表やバランスシート(賃借対照表)の数字を意識していない経営者に驚いたという。日本の企業は売り上げ重視で、資本の効率性に対する意識が薄かったことに強く危機感を覚えた。

そもそも投資とは何かという根本に立ち返ると、「将来的にリターンを生むであろうという期待をもとに、資金(資金に限らず、人的資源などもありうる)をある対象に入れること」であり、投資には必ず何らかのリスクが伴う。…期待値が大きくないと、金銭的には投資する意味がない。そこを的確に判断できることが、優れた投資家の条件だ。

P16

上場することは英語で「Going Public」と呼び、非上場化は「Going Private」という。公器になった企業は決められたルールに従って、投資家の期待に応えるべく、透明で成長性の高い経営をしなければならない。

そもそも「上場」とは

上場には2つのメリットがあり、株式が換金しやすくなること、資金調達がしやすくなることがある。資金調達の必要がなく、経営において株主から横やりを入れられたくないというのなら、非上場化してプライベートカンパニーにすべき。IPOとは、Initial Public Offering(最初の公募)の意味。新しく上場した企業(IPO銘柄)は投資家に注目されやすい。

M&Aとは

M&Aは「Mergers(合併) & Acquisitions(買収)」の略称であり、MBO(マネジメント・バイアウト)とTOB(株主公開買付)の手法がある。会社の買収を行うのが、経営者か法人かの違い。

筆者は、資金調達を必要としない上場企業の株価が不当に低い状態を是正する為、MBOまたはTOBを行ってきたらしい。休眠資産を株主に還元するのが、上場企業の役割とのこと。企業が経済成長する為に、株券を発行し、資金調達をする発想がないな〜。企業のアイデアがあれば、アイデアの種を成長させるために資金調達をする。資金調達をするには株券を発行し、企業成長とともに株主への還元を行う。

経営状態を示す財務諸表やバランスシートの数値が良いのは当然だが、コーポレート・ガバナンスにより株主の利益を最大化することが求められるとのこと。また、何らかの事情により株価が正当な価値を表していない企業を最も効果的に是正する方策が、累積投票制度だと考えているとのこと。

コーポレート・ガバナンスとは、投資先の企業で健全な経営が行われているか、企業かちを上げる=株主価値の最大化を目指す経営がなされているか、株主が企業を監視・監督するための制度。会社の重要な意思決定は株主総会を通じて株主が行い、株主から委託を受けた経営者が株主の利益を最大化するために経営をする、という考え方がある。

P31

筆者は「自分は投資家であり、経営者にはなれない」と語っている。では、投資家と経営者の役割の違いとは。

投資家は、リスクとリターンに応じて資金を出し、会社が機能しているかを外部から監視する。経営者は、投資家に対して事業計画を説明し、社内の人材や取引先などをマネジメントして最大限のリターンを出す。

P50

大航海時代にアメリカ大陸に上陸したコロンブスは、スペイン王室に援助を求めた。つまり、コロンブスは経営者であり、スペイン王室は投資家だった。新大陸で発見された金銀財宝は、スペイン王室に配当として還元された。株式会社という形で整備されたのは、1600年に設立された東インド会社を起源としている。

投資先の判断は、期待値とIRR(内部収益率)によって決定しているとのこと。期待値1.0%を超えるかどうか、IRRが10%以上であることが基準らしい。IRRは、投資期間内における利回りを示した数値の事。ROE(Return on Equity=投下資本利益率)は、投資した金額に対して利益がどの程度生まれるかを示すコーポレート・ガバナンスの指標の1つである。企業がROEを高める為には、当期純利益を高くするか、純資産を減らすか、という2つの方法しかない。利益を高めるか、純資産を減らすために自己株式の取得または配当などで投資家へ還元する。ROEは米国に比べて著しく低く推移している。投資家へ戻った資金を、成長を必要としている別企業に投資することで、世の中にあるお金が循環し、経済が回っていく。日本には上場企業だけで300兆円を超える内部留保がある。

東京スタイルの内部留保を解消するためのプロキシー・ファイトの話などは、経済界の重鎮らとの戦いが描かれる。株主となって、新たな取締役を擁立したり、配当金の底上げを要求したりと、保守的な日本企業に対するチャレンジに驚く。何となくM&Aで買収する企業の合理主義に恐怖を抱いていたが、むしろ保守的で資金を内部留保する企業の方が経済から見れば悪なのか。コロナショックでは、この以上な日本企業の内部留保によって救われた面もあると聞くが…。

ライブドア事件についても描かれているが、当時はメディアを見ていた限りでは、堀江貴文がフジテレビを乗っ取る為にニッポン放送株の筆頭株主になったと見えていたが、本来の目的は子が親を食う状況になっているニッポン放送とフジテレビの関係改善及び株価の是正をする為だった。「新興企業のテレビ局の乗っ取り」にしか見えていなかったのは、これも金融リテラシーの不足と、メディアの恣意的な放映に問題があると今では思う。

本書でも、株式交換によりニッポン放送がフジテレビの子会社になること。または、別会社を作って事業会社を横並びにする手段等の提案を模索していたという。信用性やシガラミという数字以外の概念によって成り立っている日本社会は、合理主義にある欧米から見れば甘い。上場企業の株式は誰でも売買できるため、そのリスクとコストを踏まえた上で、上場を維持するべきだと説く。

他にもたくさん書いてあったけど、正直全然理解できなかった〜。もう少し金融リテラシーあげてたり、企業分析できるようになったらまた読んでみたい。