アウトドア般若心経
みうらじゅん著の「アウトドア般若心経」
写経ならぬ「写真経」を思い付いた著者は、街にある「般若心経」の漢字の1文字を撮影に取り憑かれる。閉店した「ちゃんこダイニング若」の看板が使用されていて、栄枯盛衰をひっそりと感じた。
駐車場にある「空アリ」を見て、般若心経の真髄である「空」の教えが示されているように感じたらしい。そして、別の駐車場にあった「空ナシ」の看板を見て、「ないことがナイ」とはどういう事なのか、仏教の講義を受けたいと思った。この辺りが、みうらじゅんの最高に狂ってるところ。
スナップ写真ばかりかと思いきや、「般若心経」の訳も書かれていて、案外勉強になった。みうらじゅんに言わせれば、般若心経はジョン・レノンの「イマジン」との共通言語がたくさんあるらしい。
国境もない、天国もない、地獄もない、宗教も地位も名誉もなんにもない、「ない」と思ってごらん、ただそこには「空」が広がってるだけ、と言うのは「色即是空」と同じ意味なのだ。
快楽も苦悩も、外の世界から与えられたものじゃなく、全部自分というものがそう感じ、そう思い、そう行うことの結果だったことが分ったのです。”自分探し”などという言葉がありますが、探せば探すほど都合いい自分しか見つかりません。その自分と思い込んでいる自分もこの先どれだけ続くかどこにも確証はありません。
般若心経にはあえて訳されていない文言 “ギャーテー ギャーテー ハラギャーテー ハラソー ギャーテー ボジソワカ” がある。意味など求めることなく、ただ唱え続ければ最終的に自分がなくなってしまう状態に持っていく呪文であるのだと筆者は言う。
何も考えずにひたすら般若心経の文字を写経する、いや「写真経」する。「悩みから逃れたいのならまず、自分を捨てよ」