【読書】自分の中に毒を持て

  • ブックマーク
  • Feedly

自分の中に毒を持て

感想

1988年発行の本書。長年愛され続けている岡本太郎の言葉の活力、軽やかさと、魔力。やはり、戦前世代の精神性の基軸にあるのは実存主義で、現代社会にも必要されている哲学体系だと思った。また、1920~1930年代のヨーロッパの独裁政権の台頭と、シュルレアリスムの文脈に対する理解があると、岡本太郎の人生思想に関する理解がグッと深まると思う。

人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。…人生に挑み、ほんとうに生きるには、瞬間瞬間に新しく生まれかわって運命をひらくのだ。それは心身とも無一物、無条件でなければならない。捨てれば捨てるほど、いのちは分厚く、純粋にふくらんでくる。今までの自分なんか、蹴トバシてやる。そのつもりで、ちょうどいい。

P11

敬愛するホドロフスキーの精神と哲学性に似ている。人生を圧倒的に肯定し、失敗を肯定している。岡本太郎はもしや、LL型のセトロニン運搬遺伝子を持っていたのかと推察する。結果が上手く行くかは関係なくて、実行することに集中することこそが重要だと説く。

それに、人間にとって成功とはいったい何だろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか。夢が例えば成就しなかったとしても、精いっぱい挑戦した、それで爽やかだ。

P29

我々現代人に必要なのは、命を燃やす、失敗を恐れない、プリミティブに生きることの3つな気がする。思想が死ななければ、生きる意味は自分で掴める。この本の中で一番好きなメッセージが『弱さを認める』、『強くなろうなどと考えるな』という言葉。

自分はそういう人間だ。駄目なんだ、と平気で、ストレートに認めること。そんな気の弱いことでどうする-とクヨクヨしても、気は強くならない。だから、むしろ自分は気が弱いんだと思って、強くなろうとジタバタしない方がいい。諦めるんではなく、気が弱いと思ってしまうんだ。そうすれば何かしら、自分なりに積極的になれるものが出てくるかもしれない。

P38

生きるということを真剣に考えれば、人間は内向的にならざるを得ないのだ。…強い性格の人間になりたかったら、自分がおとなしいということを気にしないこと−それが結果的には強くなる道につながる。

P89〜P91

良いメッセージがあり過ぎて、どんどん体内に入っていく。本当に岡本太郎という人は凄い。情熱について、「そこにある山」にあった『隆起する事態』と同様の意味を示していると思った。

情熱というものは、”何を”なんて条件付きで出てくるもんじゃない、無条件なんだ。何かすごい決定的なことをやらなきゃ、なんて思わないで、そんなに力まずに、チッポケなことでもいいから、心の動く方向にまっすぐに行くのだ。失敗してもいいから

P40

今を生きている一瞬に命を燃やす。芸術は爆発だ!という言葉の真の意味について、本書では解説している。

私の言う「爆発」はまったく違う。音もしない。物も飛び散らない。全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。それが「爆発」だ。人生は本来、瞬間瞬間に、無償、無目的に爆発しつづけるべきだ。いのちのほんとうの在り方だ。

P216

とにかく元気が出る!元気が欲しい時に、何度も読みたい。